巨大な太鼓腹が見える半裸姿で、大きな袋と杖を持ったオジサンが布袋です。
布袋はセクハラおやじみたいな恰好ですが、ニコニコした表情を見ていると、何だか憎めないんですよね。
今回は、七福神の中で唯一実在のモデルが存在する布袋を紹介します。
布袋和尚は町から町へ物乞いをして歩いていた
布袋のモデルは、唐代末期(9~10世紀)の禅僧・契此(かいし)だといわれます。
他に「布袋和尚」と呼ばれた僧侶は3人もいたんですって。ただ、どの布袋和尚も、七福神の布袋と同じ姿で語られています。
布袋和尚は、施しを求めて町から町へと渡り歩いていました。お布施として受け取った食べ物は少しだけ食べて、残りは袋に入れていたそうですよ。今でいうホームレス!
とはいえ、ただのホームレスなら、七福神の仲間入りなんてしませんよね。実は布袋和尚は、不思議な力を持っていたんです。
たとえば、雪の中に寝ても少しも濡れませんでした。吉凶を予測する占いも100%的中したっていうから驚き!
雨の降る日は濡れ草履で歩いて、晴れた日は高歯の木靴で歩きました。橋の上で膝を立てて眠るっていう軽業みたいなこともしたそうです。
しかも、18人の子どもを連れていたっていう話まで……。布袋和尚、その子たちをどこからさらってきたのよ?(笑)
布袋のモデルが4人もいるんですから、いろんな人物伝や言い伝えが混ざり合ったんでしょうけど、それにしても奇妙な和尚ですね。
弥勒信仰と結び付けられて人気者になった布袋
布袋和尚のエピソードを聞く限り、「占い的中率100%!」以外のありがたみはいまいち伝わってきません。
それなのに布袋が人気者になったのはどうしてでしょうか?
布袋は、中国で流行した弥勒(みろく)信仰にあやかって人気を獲得していきました。
弥勒菩薩は、釈迦が没してから五十六億七千万年後に地上へ降りてきて、人々を救済するとされています。
弥勒菩薩は人々に知られないようにひっそり姿を現すと言い伝えられていたので、「もしかしたら布袋和尚が弥勒菩薩の化身なんじゃないの?」って噂になったんですね。
中国の弥勒信仰が日本に入ってきました。中世末期には、京の町に住む人々が、布袋を福の神としてもてはやしたとか。鎌倉・室町期には、禅僧たちが布袋を画題にしていました。
中には弥勒信仰に関心を示さず、布袋の掛け軸を床の間に飾ることを批判する人々もいました。
でも、「泣いて暮らすも一生。笑って暮らすも一生。同じ暮らすなら笑って暮らせ」という布袋和尚の人生訓は多くの人々に受け入れられて、布袋は七福神の仲間入りを果たしました!
欲が無く物事にこだわらない布袋の生き方がステキ
布袋和尚が本当に弥勒菩薩だったのかどうかはわかりません。
そんな布袋和尚ですが、欲が無く物事にこだわらない彼の生き方は、現代社会でこそ評価されるべきなんじゃないでしょうか?
私も布袋のように「笑って暮らす」一生を送りたいものです。