京都の西本願寺が中心となって2018年6月に設立した「TERA Energy」が、2019年1月から電力小売り事業をスタートさせる予定です。
このことがニュースとして報じられたため、ネット上では賛否両論が巻き起こっています。
私は、お寺が電力小売り事業に参入することに賛成です。檀那制度への依存から脱却しようっていう西本願寺の決断はすばらしいと思います。
今回は、ニュースを読んで考えたことを書きますね。
「坊主丸儲け」の葬式仏教が悪いイメージの理由
お寺が電力小売り事業に参入することに反対する人たちって、どうもお寺に対して悪いイメージを持っているっぽいんですよ。
悪いイメージはどこから来るんでしょうか?
仏教が“葬式仏教”になっちゃったことに原因があります。
もともと仏教は釈迦の教えを伝えていく宗教でした。
しかし、江戸時代に徳川幕府がキリシタン取り締まりのために檀那制度を定め、仏教を民衆を統治するためのシステムにしてしまいました。これが葬式仏教の始まりだっていわれます。
檀那さんの葬式や法事のたび、お寺には高額なお布施が入ってきます。人間は必ず死にますから、決して収入の途絶えないビジネスモデルでした。
そんな檀那制度に依存したお寺が堕落していきました。「坊主丸儲け」ってことわざもあるくらいです(笑)
もちろん、生きている人たちのために社会奉仕を行っている立派なお寺もありますよ。でも、目立ってしまうのは、葬式などを巡る悪質で強欲な手口ばかり……
墓地の永代使用権が欲しければ、墓石は●●で買いなさい。戒名をつけるので▲▲万円払いなさい。離檀(檀那をやめること)は認めない。どうしてもっていうなら、離壇料は■■万円だ。当然、墓石は撤去してもらうが、それでいいか?……
こんなことを檀那に迫るお寺も多くて、消費生活センターに相談が寄せられたり、最高裁まで争ったりした例も増えているみたいです。
これじゃあ、お寺に興味ない人たちが、「また金儲けのことばかり考えやがって!」という悪いイメージを抱いても仕方ないですよね?
檀那制度がなくなって葬式や法事が“サービス”に
お寺の存続が檀那制度に依存していたことがそもそもの問題!
旧態依然としたお寺の在り方にメスを入れていくお坊さんたちもいました。その一つが社会奉仕活動ですが、いくらボランティアをしたって、お寺の収入になるわけじゃありません。
檀那制度自体を改革して、葬式や法事などを“サービス”として見直す動きもあります。
たとえば、埼玉県熊谷市にある曹洞宗の見性院(けんしょういん)が有名です。橋本英樹(えいじゅ)住職は檀家制度を廃止する一方で、葬式などにかかるお布施の額を明確にしました。
お布施っていうと、「いくら包んだらいいかわからない」という悩みの種。お寺側も、ブラックボックスなのをいいことに、「Aさんはお金持ちだから30万円請求して、Bさんは貧乏だから3万円にしておくか」な~んてできちゃったりします。
そんな不透明さを無くして、しかも従来のお布施の額の半額以下にしたっていうから驚き!
遺骨を郵送で受け付ける「送骨サービス」もあって、物流が盛んな現代社会のメリットを十分に生かした新ビジネスに注目が集まっています。
Amazonのお坊さん派遣サービス「お坊さん便」などが出てきている時代に、今までと同じやり方が通用しないのは明らか。
![]() |
お葬式お坊さん手配チケット (お葬式お坊さん手配チケット(通夜・葬儀、戒名あり)) 新品価格 |
橋本住職は、他のお寺や檀家さんの一部から非難されているみたいですが、日本仏教の在り方をガラッと変えるためにも、是非がんばってほしいと思っています。
お寺の経営難の背景にある葬儀や供養の多様化
お寺の経営難の背景には、葬儀や供養の多様化があります。
お坊さんが派遣されてやってくる時代ですからね。いろんなお葬式が選べます。日本最大級の葬儀ポータルサイト「いい葬儀」で自分に合ったお葬式を選ぶといいですよ。
遺灰を海や森林に撒く散骨や桜などの根元に遺骨を埋める樹木葬など、自然葬も最近のブームです。葬儀代やお墓の管理費などを抑えつつ、自然環境にも優しいのが選ばれる理由です。
遺骨をアクセサリーやオブジェにして自宅で保管する「手元供養」や、遺骨を墓から掘り出して散骨するといった「墓じまい」など、現代的な葬儀や供養はどれも魅力的です。
こういった時代の流れに合わせられるお寺はいいんでしょうが、「うちの寺では、●●の葬式しか認めん!」っていうお寺だと、だんだん人が寄り付かなくなるでしょうね。
さらには、少子高齢化が進む過疎地域では、そもそも人がいなくて、葬式は年に数件あるかないかなんてことに……。もはや檀那制度どころじゃありません。
公金を当てにできないお寺は自ら稼ぐしかない
時代が変わったからといって、「経営難のお寺は潰せ!」という暴論には、私は「NO!」と言いたいです。
お店や公共施設などが潰れるのと、お寺が潰れるのとでは、その重みが違います。
お寺は長年、その地域の人々に寄り添う“心の拠り所”でした。地域の歴史とともに歩んできたお寺も少なくないでしょう。
そんなお寺を潰すのは、その地域の精神や歴史を潰すのと同じ!
かといって、お寺を存続させるために国や地方公共団体の財産(公金)を使うことは、日本国憲法で禁止されています。
日本国憲法は20条で信教の自由を保障すると同時に、89条で宗教関係の組織への公金支出を禁止する政教分離を定めています。
政教分離の原則は、政治と宗教が手を組むと、どっちも腐敗してしまうことが多いので、それを防ぐためにあるんですよ。
実際、江戸幕府に保護された仏教はキリスト教弾圧の道具とされ、後世に“葬式仏教”と批判される檀那制度が生まれました。そんな仏教も、明治政府が神道を国教化したために弾圧され、割を食っちゃいました。
その時々の社会情勢に左右される政治と、普遍的な真理にもとづいて運営されるべき宗教は、本来は相容れないものです。
でも、だからこそ、お互いの利益のために手を組んで、堕落の底なし沼にドロドロズブズブ沈んでいく危険性があるってわけ!
江戸幕府と仏教、戦前の日本と神道などの癒着を反省し、歴史的な失敗を繰り返さないことを目的とする日本国憲法89条は、やっぱり遵守されるべきでしょう。
経営難のお寺は公金を当てにできないんですから、自ら稼ぐしかありません。その一つのモデルとして、TERA Energyは魅力的だと思います。
TERA Energyの事業展開から目が離せない
ニュースによると、TERA Energyは中国地方以外への進出や、宗派を超えたお寺の連携など、事業の拡大にも積極的だといいます。
東京にTERA Energyが進出してきたら、私もTERA Energyに切り替えようかなって思っています。
私の払った電気料金が地方のお寺の存続に役立つなら、とっても嬉しいです!
TERA Energyの今後の事業展開から目が離せません。