皆さんは、天使に位階(ランク)があることを知っていましたか?
『聖書』を読んでいるだけだと、天使に「偉い・偉くない」があるってわかりません。
そんな天使ですが、キリスト教の神学者たちはランク付けをしているんですね。中でもいちばん有名なのが「天使九階級」!
今回は、この天使九階級を紹介します。
『天上位階論』における天使九階級
天使九階級を初めて紹介したのは、5~6世紀ごろに活躍したとされるシリアの神学者・偽ディオニュシオス・ホ・アレオパギテースです。
偽ディオニュシオスは、「3」にこだわるプラトン主義と新プラトン主義が大好きだったんです。
だから、著書『天上位階論』の中で天使を3つの位階に分けて、さらに1つの位階を3つに細分しちゃいました。
9世紀、思想家ヨハネス・スコトゥス・エリウゲナが『天上位階論』をギリシャ語からラテン語に翻訳。この翻訳を通して、中世の神学者たちの間で偽ディオニュシオスが有名になりました。
13世紀、神学者トマス・アクィナスが『天上位階論』を受け継ぎます。
トマスといえば『神学大全』の著者として有名な人です。カトリック教会の33人の教会博士のうちの1人に数えられるくらい偉いんです。
そんな偉い人が「天使九階級は正しい」なんて言うので、天使九階級がキリスト教の“常識”になりました。その後、天使九階級はキリスト教世界の思想や芸術、建築などにも影響を与え続けるほどに発展しました。
天使の姿と役割ってどうなってるの?
天使九階級のそれぞれの位階を詳しく見ていきましょう。
上位三隊―熾天使・智天使・座天使
上位三隊に属する天使は、上の階級から熾天使(Seraphim)・智天使(Cherubim)・座天使(Throni)です。この天使たちは、神と直接会える存在で、神の威光を中位三隊に伝える役割があるんですよ。
熾天使(Seraphim)
熾天使(単数形:Seraph、複数形:Seraphim)は、神に最も近い、または神と一体化しているとされる天使です。
「熾(し)」は、「さかんに燃える火」のことで、「燃焼させる」「破壊する」などを意味するヘブライ語の動詞 “saraf” に由来します。「愛の火」を燃やしながら神のそばにお仕えするって意味です。
熾天使は6枚の翼を持っています。2枚の翼で顔を覆い、2枚の翼で足を覆い、残り2枚の翼ではばたくといわれます。熾天使が翼で顔や体を覆い隠すのは、神の輝きがあまりにも強烈なためなんですって!
また、この6枚の翼は、天地創造の6日や魂が照らされる6段階を象徴するとも考えられています。
智天使(Cherubim)
智天使(単数形:Cherub、複数形:Cherubim)は、神に与えられた知恵を第2の階級に伝える天使です。
語源の “cherub” というヘブライ語は「知識」「仲裁する者」という意味。『エゼキエル書』によると、智天使は、4つの顔と4枚の翼をもつ異形の姿をしているっていいます。
座天使(Throni)
座天使(単数形:Thronus、複数形:Throni)は神の玉座を運ぶ天使です。
座天使は、燃え盛る車輪として描かれます。そして、多くの目を持っているんですって!
中位三隊―主天使・力天使・能天使
中位三隊に属する天使は、上の階級から主天使(Dominationes)・力天使(Virtutes)・能天使(Potestates)です。この天使たちは、上位三隊から受けた神の威光を下位三隊に伝える、いわゆる天使界の中間管理職!
主天使(Dominationes)
主天使(単数形:Dominatio、複数形:Dominationes)は、神の威光を全世界に知らしめる天使です。「主権」という別名もあります。
力天使(Virtutes)
力天使(単数形:Virtus、複数形:Virtutes)は、神の恩寵と勇気とを英雄たちに与える天使です。
イエス・キリストが磔刑に処せられて昇天するときに付き添ったともいわれていて、なかなか重要な役割を担ったんですよ。
能天使(Potestates)
能天使(単数形:Potestas、複数形:Potestates)は、神に反逆する悪魔たちと最前線で戦う天使です。
能天使は悪と接する機会が多いため、自らも悪者にもなっちゃう可能性があるそうです。そのせいか、能天使が悪魔たちのリーダーだって信じる教皇もいたという話です。とんだ濡れ衣です(笑)
下位三隊―権天使・大天使・天使
下位三隊に属する天使は、上の階級から権天使(Principatus)・大天使(Archangeli)・天使(Angeli)です。この天使たちは、人間にとってももっとも身近な天使たちです。上位の天使たちから受けた神の威光を人々に伝える、神と人とのパイプ役といったところでしょうか?
権天使(Principatus)
権天使(単数形:Principatus、複数形:Principatus)は、人間界の国家と都市、指導者たちを見張る天使です。
権天使は、人々の宗教を守って、正しい政治を行う国家が他国と戦うときに力を貸すんですよ。
大天使(Archangeli)
大天使(単数形:Archangelus、複数形:Archangeli)は、神と人間とを結ぶ連絡係であり、天使軍を率いる役割も担う天使です。
偉大な人物に守護天使を送り、その守護天使の監督も行います。世界の終末では、ラッパを吹き鳴らして神の降臨を讃えるといわれます。
天使(Angeli)
天使(単数形:Angelus、複数形:Angeli)は、神の言葉を人間界に運ぶ密使の役割を果たす天使です。
天界と地上界とをしょっちゅう行き来して、神の意志に沿って人間を助けることもあれば、罰することもあります。
天使のストーリーに思いを馳せる
マンガやゲームなどに登場する天使たちにも、もちろん位階がありますよ。
たとえばミカエルは大天使です。あんなに有名なのに、下から2番目なんですね。びっくりです(笑)
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一方、堕天したサタンは熾天使でした。「明けの明星」とも同一視されるサタンは、12枚の羽根を持ったひときわ美しい天使だったんですよ。でも、傲慢な性格で、「自分がいちばん優れている」って思い込んじゃったために神から追放されてしまいました。
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有名な天使たちについても、位階を調べてみると、いろいろ見えてくるものがあります。天使のストーリーに思いを馳せるのもおもしろいんじゃないでしょうか?