日本人にとって、韓国はとても気になる国ですよね？
竹島問題や従軍慰安婦問題などの政治的対立はありますが、「韓流ブーム」もあって好意的な印象を抱いている人も多いはずです。格安の韓国ツアー
は特に人気があります。
そんな韓国では現在もシャーマニズムが盛んなんですよ。韓国のスピリチュアル文化を紹介します。
韓国のシャーマニズム「ムーソク」とは？
シャーマニズムは、シャーマンの存在を前提として成り立つ宗教です。
武井宏之作のマンガ『シャーマンキング』がアニメ化され、『SHAMAN KING』として2021年4月1日からテレビ東京系列で放送されて話題となりました。そのため、「シャーマン」という言葉は、子供でも知っています。
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そもそもシャーマンとは何なのでしょうか？
シャーマンは、霊能力を使って人々の悩みを解決したり、未来を予言したりする人たちです。霊能者や予言者というとわかりやすいかもしれませんね。中でも、霊を自分に憑依させて人格が変わるシャーマンが有名なんじゃないでしょうか？
韓国のシャーマニズムは「ムーソク（巫俗）」と呼ばれます。シャーマンの総称は「ムー（巫）」で、女性のムーは「ムーダン（巫堂）」、男性のムーは「バクス」といいます。
ムーソクは、さまざまな神々や超自然的な存在の信仰と祖先崇拝を中心とします。選ばれた人がムーとなり、神である「クッ」を自らに憑依させて、歌や踊りの中でお告げを行います。ムーは霊媒としての役割を果たすわけですね。
ムーはカラフルな衣装を着ていて、エクスタシー状態で神からのお告げを口にします。儀式の間に、ムーは衣装を数回変えます。とにかく派手ってことですね。
さまざまなクッが存在して、個人に幸福をもたらしたり、病人を治癒したり……。日本の八百万の神々みたいな感じです。
先史時代に成立したムーソクが復活するまで
ムーソクは、仏教と儒教が伝来したり、韓国独自の道教が成立したりする前の先史時代にまでさかのぼるといわれています。神霊を祭る寺院の跡が朝鮮半島の山の頂上や斜面から多く発見されました。
4世紀に半島に仏教が伝来すると、韓国人の多くは改宗しました。新羅と高麗では仏教が国教となる一方で、ムーソクは細々と受け継がれて行ったんですね。15世紀以降では儒教が国教として採用されたため、儒教以外の宗教は弾圧されました。ムーソクも弾圧の対象でした。
19世紀後半から20世紀にかけて、キリスト教の宣教師の影響でキリスト教が広まり、ムーソクは「悪魔の宗教」と考えられて弾圧されました。日本による統治が行われた時期、日本はムーソクを神道に取り入れました。
日本の支配から解放された後、1940年代の短い期間、ムーソクは韓国の国民的宗教として栄えました。でも、1970～80年代には、政府が伝統的な宗教を禁じました。北朝鮮では、すべてのムーとその家族が政府から敵視されました。
韓国でムーソクが復活したのはここ数十年の話なんですよ。現在では、ムーソクは天道教や甑山教などの新興宗教に影響を与えています。さらには、韓国にあるキリスト教教会の中には、ムーソクを取り入れているところもあります。
北朝鮮におけるムーソクはリスクと隣り合わせ
韓国のムーソクの儀式は、見た目が派手で、多くの音を鳴らします。一方、北朝鮮では、ムーソクが違法な迷信とされていて、ムーは逮捕されて再教育施設や労働収容所に送られるリスクがあります。そのため、ムーは細々と占いを行うだけ……。それでもムーを頼る人が後を絶たないのは、誰もが脱北するのにふさわしい時期を知りたがっているからなんですよ。
ムーのイ・イェジュさんは、2006年に33歳で北朝鮮から韓国に亡命しました。彼女は北朝鮮にいた頃を振り返って、「（北朝鮮で）私のところに来た人は全員、役人でした。（普通の北朝鮮人は）食べるものすらないので、占い師を探すのはお金を持っている人だけでした。彼らは通常、いつ仕事を失業するか、子供たちは誰と結婚すべきなのかを尋ねます」と述べました。
そんな彼女は苦しい旅を経て北朝鮮から脱出し、現在は韓国でムーとして活動しています。
韓国のムーソクは人々の生活に影響を与えている
韓国ソウルにある西江大学校の宗教学者、キム・ドンギュさんは、現代のムーソクについて解説しています。
それによると、ムーソクは、アニミズム・祖先崇拝・民間信仰の要素を組み合わせて、人間の生活にへの自然と超自然の両方の影響を説明しようとしているそうです。
ムーは儀式を行うことで、超自然的な世界とコミュニケーションをはかり、中国の暦に基づいて運命を予測します。他にも、生まれてきた子供の名前を決めたり、結婚の仲人を務めたり、結婚式や引越しに縁起の良い日付を選んだりします。
韓国では現在もムーソクが人々の生活に影響を与えています。韓国を旅行する際は、ムーを訪ねてみるのも面白いかもしれませんね。
