駅や街中で、知らない人から「お金を貸してください」って声をかけられたこと、ありませんか?
声をかけてくる人は、「財布を落としてしまって」なんて言って、とても困っている様子。そんな人を見ていると、つい親切心が芽生えちゃいます。
でも、お金を貸すと……。
私の実体験とそこから得た教訓をお話ししますね。
「お金を貸してください」と言う人たち
私は人生で3回、赤の他人から「お金を貸してください」って声をかけられたことがあります。
地元の駅構内にて
初めて声をかけられたのは、私が高校生のとき。場所は地元にある駅の構内でした。
暗~いオーラが漂っている20代くらいの小太り男性が、私の肩をポンポン叩いてきました。
「すみません。財布を落としてしまって切符を買えないんです。お金を貸してもらえませんか?」
突然のことですから、私はびっくり。どうすればいいのかもわからず、とりあえず「いくらですか?具体的に金額を教えてください」って聞いてみました。
すると、小太り男性は「分かりました。ついてきてください」と言って、一人でスタスタと券売機の方に歩いて行っちゃいました。
私は、彼の背中をじぃ~っと眺めた後、彼が向かっているのとは反対方向に歩き出しました。
特に理由があったわけじゃありませんが、何となくお金を貸さないで終わりました。
東京の街中にて
2回目に声をかけられたのは、社会人になってから。場所は東京の街中でした。
「バス代が足りないから100円貸してもらえませんか?」と声をかけてきたのは、多分おばさん。
「多分」って書いたのは、とにかく正体不明で、怪しさが凄まじかったからです。
真夏なのに黒の長袖長ズボン。帽子にマスク、サングラスまでかけているんですよ。女性の声なのは確かでした。
普通に考えて、こんな怪しい人とは関わりたくありません!
でも、誠実が売り(?)の私は、声をかけられた以上、対応しようとしました。財布を取り出して小銭入れを見ましたが、幸か不幸か、100円玉が無い!
「100円玉が無いんですけど……」
そう言った私に、女性が言った衝撃の一言!
「あら?お金持ちぃ~!じゃあ、そこに自販機があるから、お札を崩してよぉ!」
――はあ?このおばさん、何言ってんの?どうして、あんたのために自販機でジュースを買わなきゃならんのよ?
さすがにカチンときた私は「嫌です」と断りました。
すると、おばさんは「ケチ!」と吐き捨てて、そそくさとその場を去ってしまいました。
というわけで、お金を貸しませんでした。まあ、1円たりとて貸したくなかったし、貸さなくて正解でした!
六本木駅付近にて
3回目に声をかけられたのは、おばさんとの遭遇から2年後くらいのときです。場所は都営大江戸線六本木駅付近。
夕方、用事があって道を歩いていた、というか道に迷っていた私に、おじさんが声をかけてきたんです。スーツを着たサラリーマン風で、気弱そうな感じの人でした。
「すみません。財布を落としてしまって切符を買えないんです。300円、貸してもらえませんか?」
いかにも困っている感じで、うつむきながらボソボソしゃべるおじさん。
私は、おじさんが気の毒に思っちゃいました。そこで財布を出して小銭入れを見ました。でも、300円が無い!
仕方ないので、「これで切符を買ってください」と1,000円札を渡しました。
おじさんは「ありがとうございます。後日お金を返しますので、お名前と電話番号を教えてもらえませんか?」とペンとメモ帳を取り出しました。
その言葉を信じて個人情報を教えちゃった私――。
「ありがとうございます」を繰り返すおじさんと別れた後、「私は親切な人間だ」という自己満足でニヤニヤしちゃいました。
今になって思えば、ただのバカ!
この日から何日も経ちましたが、当然のことながら、おじさんからの連絡は無し。
私はおじさんを信頼して、おじさんの連絡先を聞きませんでした。だから、こちらからアクションを起こすこともできず……。
ここで私はハッと気づいちゃいました。
――私は詐欺に遭ったのでは……!?
ネットで調べてみたら、ああ、やっぱり……。残念ですが、あのおじさんは詐欺師だったんですよ。
「寸借詐欺」に出会ったらどうする?
見知らぬ人から「お金を貸してください」と声をかけられたら、それは間違いなく寸借詐欺です。
寸借詐欺とは?
寸借詐欺は、「財布を落とした」などと言って困っているふりをし、善意の人から数百円から数千円をだまし取る行為です。
私のような「親切な人」が被害に遭いやすいんですって(笑)
詐欺師は「借りたお金を後で返すため」と言って、お金を貸してくれた人の個人情報を聞き出しますが、連絡は来ませんしお金も返してくれません。
こちらが「あなたの連絡先を教えてください」って要求しても、詐欺師は嘘の電話番号などを教えてきます。だから、それが何らかの証拠になることもないんですね。
寸借詐欺では、詐欺師は「後でお金を返すつもりだった」って主張できるので、「相手をだまそう」という意志が必要な詐欺罪は成立しにくいそうです。
1件1件の被害額が少ないんで、被害届すら出されず、放置されることも多いんですね。仮に被害届が出されても、警察がきちんと動いてくれないって噂も……。
ちなみに私も被害届を出しませんでした。たかが1,000円ごときで警察に関わりたくないですからね。
寸借詐欺への対処法
見知らぬ人から「お金を貸してください」と声をかけられても、絶対にお金を貸してはいけません。
「困っている人を助けない自分はダメだ」などと思う必要はありません。「貸せません」「嫌です」という断り方で十分!
「あまりにもつっけんどんな物言いだとちょっと……」って思うなら、「交番でお金を借りられますよ」と教えてあげるのがベスト。
本当に財布を落としたり盗まれたりした人なら、「公衆接遇弁償費」という制度を利用して1,000円まで借りられるんですって。
この制度を教えてあげれば、良心の呵責に苛まれることなく、気持ちよく詐欺師を追っ払えます。何なら、詐欺師を交番まで連れて行ってあげるといいんじゃないですか?
一方、お金を貸してしまったら、「貸したお金はもう戻ってこない」と諦めちゃいましょう。警察に被害届を出すのは時間と労力の無駄ですから。
どうしても貸さざるを得ない場合(刺されそうな場合とか?)、「この金額までなら戻ってこなくてもいい」と思える金額を渡しましょう。
お金関係で他人を信頼してはいけない
今だからこそ正直にいうと、六本木でおじさんに1,000円を渡したとき、私は賭けてみたい気持ちになっていたんです。
「お金は戻ってこないかもしれない」と思ってはいました。
友人知人に貸したお金すら、ほとんど戻ってこないじゃないですか?
それなのに、赤の他人に貸したお金が戻ってくるなんて――。
でも、だからこそ、赤の他人の善意を信じてみたくなったんですよ。「このおじさんが1,000円を返してくれたら、これからも他人を信頼し続けよう」と考えました。
性善説万歳!
頭の中はお花畑!
結局1,000円は戻ってきませんでした。しかも、後で調べてみたら、おじさんの手口は典型的な寸借詐欺。ここで私の決意は固まりました。
お金関係では、もう二度と他人を信頼しない!
友人知人も含めて、お金の貸し借りはNG!
「儲かりますよ」という話はすべて無視!
何に使われるのか分からない募金は断固拒否!
要は、お金関係で厳しくなっちゃったってことです。
その後、某駅の近くでフィリピン人っぽい美女に声をかけられ、「アジアのめぐまれないこどものために……」というひらがな書きのカードを見せられたことがあります。
私は「募金には一切協力しません!」と即答。カードを投げ捨てそうな勢いで睨みつけてやりました。
フィリピン人唖然!(笑)
これも後で知ったんですが、この募金も詐欺だったみたいです。
やっぱり赤の他人を信じちゃいけませんね。特にお金を要求してくる人は。
六本木で出会った詐欺師のおじさんは、たった1,000円で私に大切なことを教えてくれたんです。そう考えると、「良い人」だったんじゃないかしら?
詐欺師のおじさんにちょっぴり感謝しつつも、やっぱりおじさんの来世を願っちゃいます。「地獄に落ちろ!」と(笑)